ほがらか文庫

ひとりよがりの読書記録

ほがらか文庫017:「おわらない音楽」小澤征爾著

予習のためにこの本を読みました。

副題は「私の履歴書」で、日経新聞に連載された記事の書籍版です。

副題の通り、淡々と小澤征爾のこれまでの歩みが綴られていました。

 

初めにワクワクしたのは、「征爾」という名前の由来。

なんと、関東軍作戦参謀の石原莞爾さんと板垣征四郎さんのお名前から一字ずついただいたそう。

これ、前述の ほがらか文庫016:「昭和史 1926-1945」半藤一利著 - ほがらか文庫 に写真付きで登場するキーパーソン。

小澤征爾のお父さまは、満州で政治活動をしていてこの二人とも親交があったそう。

そして小澤征爾満州生まれ。

 

「ああ、そうか〜。今の世を引っ張ってきた人たちは、戦前戦後の昭和のど真ん中を生き抜いてきた人たちだ〜。昭和史抜きに人生語れないよね。」

と、早くもつながることまあ、気持ちがいい。

 

それから、プロの音楽集団に所属したことのない私には、ひとつの集団の人間模様が新鮮であり、やっぱり中は中でいろいろ大変なんだなあ、と感じました。

 

それと、小澤征爾率いるかの有名な「サイトウ・キネン・オーケストラ」 のサイトウというのは、彼の恩師の名前でした。こういうの素敵ですね。

 

この本に、小澤征爾が語る音楽の深い話をちょっぴり期待していた私には、氏の他の著書を手に取りたい思いに駆られています。

 

今、氏は、「毎日一時間半くらいかけて、四小節や八小節ずつ勉強する。終わりに近づくと名残惜しくて”明日も同じところをやろうかな”と思う。本当に楽しい。」と語っている。

さてその演奏を、今夜は念願叶って、聴きに行ってきます。

彼が立ち上げた新日本フィルハーモニー交響楽団の特別演奏会です。

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ほがらか文庫016:「昭和史 1926-1945」半藤一利著

 〜暑中お見舞い申し上げます〜

 

私の中での流れが自然と歴史に向いている今日このごろです。

先月はざっくりと日本史を学ぶ1冊を手にしましたが、今回は終戦までの昭和史をがっつりと読みました。
 
500頁を超える1冊ですが、歴史に疎い私でもかなり早いペースで読みきりました。
語り口調でとても読みやすいです。
そして、日本人が読んでおくべき1冊だと思います。
 

昭和生まれの身として恥ずかしいくらい無知でしたので、ページをめくるたびに親や祖父母が生き抜いてきた時代がこんな混沌だったのかと、衝撃の連続でした。

 

満州事変」とか「真珠湾攻撃」とか、ワードでは知っていましたが、学校で暗記したその言葉がひとつひとつ繋がっていきました。

そしてこのところ小林秀雄とか白洲次郎とか、柳宗悦などを学んでいたので、彼らの著書や生き方に刻まれている思いは、このような時代背景の影響があって紡がれきたことをしっかり捉えることができたと思います。

 

そして、“政治を監視せよ”との先達の想いが、言葉を超えて響いてきました。

 

まもなく終戦70年。
この激動の昭和をじっくり振り返りながら、“昭和に生まれた日本人の私” という立ち位置をあらためて認識し、未来につながる学びの夏にしたいものです。

 

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おまけの緒:「何の本を読もうかな」と迷ったら

本を読んでみようという気持ちにはなったけれど、「何の本を読もうかな」と迷ったときのご提案。
 
あなたの気に入っている人が紹介している本を読むことをおすすめします。
芸能人でも良し。CEOでも良し。SNS上で気になるあの人でも良し。
 
大事なのは、あなたがその人を気に入っているということ。
 
あなたの気に入っている人が紹介している本を読むことで、その人のことをもっと知ることができる喜びを感じられます。
そして、あなたがその人を気に入っている理由のその先が、その人が紹介している本にちりばめられています。
 
本を1冊読むということは、人生の大切な時間の一部を費やすことでもあります。もし、読んで残念な気持ちになってしまったら、きっとあなたの暮らしから読書は離れていってしまいます。
 
ですので、“この人の言うことなら信頼できる”と思える人が紹介している本から始めてみましょう。
 
そこで新たな気づきの喜びを感じることができれば、次から次へと読みたい本が現れてくるものです。
そうするともう、本のある暮らしがはじまっているのです。
 

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おまけの緒:大学図書館を利用する

大学(勤務先)はもうすぐ学生さんの夏休み期間に入ります。
そこで私がとっても楽しみにしているのが、大学図書館の夏休み長期貸出です。
 
そもそも大学図書館で私は、1度に30冊までの本を4週間借りることができます。
公立図書館は貸出期間が2週間ですから、それだけでも満足度が高いのですが、長期休暇期間にはさらに長い期間借りることができるようになります。
 
今年の夏は、およそ2ヶ月。その後、次に借りたい人が予約をかけていなければ延長も可能になり、その場合には約3ヶ月間も借りることができます。
 
問題点は、借りたい本が先に借りられてしまうとしばらく順番がまわってこないということ。
そこで、今私は来るべき日に読みたい本を得られるように準備を進めております。
借りたい本をあらかじめリストアップして、長期貸出の初日に図書館に行く作戦です。
 
それで、リストアップしていたらどうしても初日まで待ちきれない思いに駆られてしまいフェイントで借りてきてしましました・・・
しかもリストにはあげていなかった本まで・・・
 

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この本も次に予約が入っていなければ延長申請すると2ヶ月以上借りられることになります。ま、その前に読み終わるはずですが。
 
ともあれ、公立図書館も補助的に利用しながらも、専らメインは大学図書館にしております。
メリットは、職場の敷地内にあるというのがいちばん大きいですが、それ以外に、読みたい本が読みたい時に借りられる確立が公立図書館よりも圧倒的に高いことがす。
 
日常の活動範囲に大学があったら、ぜひ図書館をのぞいてみてください。大学関係者でなくても、利用できる場合も多いはずです。
学生さんたちの向学心あふれる空間に身を置くだけでも、気持ちが引き締まります。
私は「学生さんたちに負けないくらい本を読むぞ」と思いながら足を運んでいます。

ほがらか文庫015:「読むだけですっきりわかる日本史」後藤武士著

ほがらか文庫の更新がずいぶんごぶさたになってしまいました。
何冊分か書きかけてはいるものの、しっくりこないと更新したくなく、そうして葛藤しているうちに、少しずつ書くことから遠ざかっていくと、“文章を書く”という回路が細くなり・・・
 
ともあれ、また書きはじめることにいたしましょう。
 
今年、読了23冊目の本が今日ご紹介する1冊です。

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昔から「歴史」に苦手意識があり、学生時代は「歴史」の避け続けてきてしまいました。
そのしわ寄せは社会人になって痛いほど感じてきました。
 
社会人の教養として「歴史」を知らないと、人とのコミュニケーションに弊害が生じます。「歴史」に通じる話題についていけないですから。
社会人の教養として「歴史」を知らないと、ニュースが理解できません。その時の事象だけでは、全体像は掴めないですから。
そして、ニュースが理解できていないということは、やはりさりげない会話の中で置いてきぼりになるわけです。
また、昔の人が書いた本を読んでも、その頃の時代背景が頭に浮かばないので、これまた面白みが半減してしまいます。
 
そんなこんなで、本当に恥ずかしい思いをしてきました。
そして英語学習が仕上がった次は、「歴史」を学ぼうと決めていました。
 
ではどうやって学ぶのか。
 
学び方としては、“聞いて学ぶ”というのが気に入っているので、手始めに、移動時間や家事をしながら音読CDを聞くというのをやってみたりもしましたが、ほとんど身に入ってきませんでした。
 
ある時、久しぶりに会った友人にその話をすると、実は彼女も同じ経験をしていました。それで困っていたときに、教員の彼女が職場の先輩に薦めてもらったのがこの本だったそう。
 
“教員お薦め”というのはけっこう説得力がありますね。
確かに読んでいてスーッと入ってきて、面白い。
大人のやり直し日本史には最適の1冊だと思います。
 
さて、これでやっと私は、長~い歴史の一番前で今日を生きている自分を感じることができました。
 
ここからどのような私の歴史を綴りましょう。

付箋:「21世紀の資本」トマ・ピケティ著

本日、「21世紀の資本」を読み終えました。読み進める中で、私が付箋を付けたところを記しておきます。

あらゆる兆候から見て、この重役報酬の変化こそが世界中の賃金格差の変遷に重要な役割を果たしてきたのだ。P.346

最高限界所得税率の引き下げは、超高所得の激増を招き、その恩恵を受けた人々が税法を変えさせるための政治力を高めた。そうした人々は最高税率を低くおさえたり、もっと下げたりするのが利益にかなっていたし、その濡れ手に粟で得た大金を政党、圧力団体、シンクタンク献金できるようになったのだ。P.348-349

資本収益率が歴史的に4-5パーセントで安定しているのは、最終的には心理的理由によるものだ。この収益率は、平均的な性急さと未来に対する態度を反映しているため、この水準からあまり変わりようがないのだ。P.374

簡単なシミュレーションをすれば、累進相続税が長期的にはトップ百分位の富のシェアを大きく減少させるのがわかる。P.389

1970-1980年あたり生まれのコーホートとうち12-14%の人が、最も賃金の低い50%の労働者の生涯労働所得に相当する相続を受けている。P.437

民間の富は公的な貧困の上に成り立っているし、これがもたらす特に不幸な結果のひとつは、私たちが高等教育に行う投資よりも債務の利払いに費やすお金のほうが今でははるかに多いということだ。さらにこれはずいぶん昔から続いているのだ。P.597

本当の会計財務的な透明性と情報共有なくして、経済的民主主義などあり得ない。逆に、企業の意思決定に介入する本当の権利(会社の重役会議に労働者の座席を用意するのも含む)なしには、透明性は役に立たない。情報は民主主義を支援するものでなければならない。それ自体は目的ではない。P.600

あらゆる社会科学者、あらゆるジャーナリストや評論家、労働組合や各種傾向の政治に参加する活動家たち、そして特にあらゆる市民たちは、お金やその計測、それを取り巻く事実とその歴史に、真剣な興味を抱くべきだと思うのだ。P.608

ほがらか文庫014 : 「忙しい人の TOEIC(R)テストとビジネス英語の同時学習法」嬉野克也著

私がとても尊敬する友人である、嬉野克也さんの新刊です。

これまで共に励ましあってTOEICの勉強をしてきました。

嬉野さんが辿った道を追うように私も努力してきたつもりでしたが、この本を読んで、「まだまだ足元にも及ばないな」と痛感しました。

嬉野さんが積み重ねてきた学習法は、ブログやtwitterでも公開されていましたし、実際にお会いしてお話を聞く機会にも恵まれましたので、理解しているつもりでしたが、この本に書かれているほとんどの提案は初めて知るものばかり。

嬉野さんが英語を身につけるために、いかに工夫し努力してきたのかということを改めて教えていただきました。

 

まもなく4月。

新しい気持ちで、これからTOEICとビジネス英語を勉強しようと決意されている方に是非読んでいただきたい内容です。

しかし、戦友である私としましては、「むむ、負けられないぞ」と、気合いの入る1冊になり得るのです。

それは嬉野さんが、もともと超有名な方というわけではなく、アラフォー現役サラリーマンとして、身近な存在であるにも関わらず、きちんと結果を出し続け、前に進んでいらっしゃるからです。

このことはただ「運が良かったから」などという安易な推測で成し遂げられることではありません。

2冊の本が書けてしまうほど、人の見えないところで様々な努力を続けてこられたことが明らかだからです。

 

あと10年後には、もっと良い学習法が出回っているかもしれません。日本人にとりまく英語環境も変わっているでしょう。

でも、学習法以前に、工夫と努力を重ね結果を出していくという人生においてとても大切な生き方を示しているこの本は、私にとっては生涯の戦友になり得るのです。

それが、この本をほがらか文庫に並べる理由です。

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