ほがらか文庫

ひとりよがりの読書記録

ほがらか文庫030:「ハワイイ紀行 完全版」 池澤夏樹著

7月に入りました。

 

そろそろ夏休みの話題が職場や家族の間で出る頃でしょうか。

旅の半分は計画が楽しいと思いますが、その中に訪ねる土地の本を読むことを加えることをお勧めします。

もちろんガイドブックではありません。

 

昨秋、久々の海外旅行で初めてハワイに行きました。

計画段階で、ハワイ本を何冊も手にとって立ち読みをしました。

またハワイが大好きな有名作家のハワイエッセイも読みました。

もちろんそれぞれに良さはありますが、ハワイに行くならまず知っておくべき大切なことが書かれているのは、池澤夏樹さんの「ハワイイ紀行」と思います。

 

この本には、日本人が観光で触れているハワイではなく、本来のハワイがどのような姿なのかが書き上げられています。

そもそもこの島々の呼び方は正式には「ハワイイ」だそうです。

 

私の心にしみこんだ言葉を抜きだしました。

 

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旅を目的主義的に組み立ててはいけない。旅の値打ちを見たものの数や、名所旧跡の数々、買物の量、撮った写真などで計ってはいけない。旅はただ気持ちよく過ごした時間の長さでのみ評価されると考えよう。P.19

 

主要産業は観光、と他の島と同じことをここでも言わなければならないが、それならば現代人にとって観光とは何か、それをゆっくりと考えてみるのもいいだろう。P.2728

 

土地があって、そこに人が来て住む。これが人間の歴史の基本型である。ハワイイではそれが明確で見やすい形で実現している。いつどこから来た人々か、何を持ってきたか、人口三十万ほどの小さな社会にどれほどの文化的活力があったか、そういうことをこの島々に学ぶことができる。P.461

 

人間はこの地球の上で生きてゆくことができ、限定された範囲で栄えることができる。この人間の存在の基本原理をハワイイは証明してきた。今の時代になぜそれがうまくゆかないのか、それはまた別の問題であるが、それについて考えるためにもハワイイ諸島とそこの人々を見ることには意義がある。楽園は可能だ、とハワイイはわれわれに教えているのだ。P.462

 

池澤夏樹「ハワイイ紀行 完全版」(新潮文庫)より

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ちなみに、私がこの旅で印象深かった場所はパールハーバーです。

ハワイに行く前の、昨年の夏に「昭和史」

ほがらか文庫016:「昭和史 1926-1945」半藤一利著 - ほがらか文庫

を読んでいたので、その歴史が刻まれている場所のひとつを訪ねられたことは、読書も旅もいちだんと有意義なものになりました。

 

読書がつながるたびには私の心は踊ります。

 

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ほがらか文庫029 : 「園芸家の一年」カレル・チャペック著

本を読んでいると、どこかで必ず心に深く染み込んでくるような言葉に出会います。

そんなとき私は、iPhoneのメモ機能に残しておきます。

また次に読んだときに違和感がありそうなので、付箋をつけたり、マーカーを引いたりすることは今のところしていません。図書館で借りている本の方が多いのが実際のところでもあります。

この取り上げた言葉たちを時々見返すのもまた良いもので、日常のなかでは忘れがちだけれども、大切にしたい想いを再確認するようなひとときとなります。

 

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手のひらほどの大きさでも、庭を持つべきだ。何を踏んでいるか認識するように、少なくとも、花壇を一つ持てるといいのだが。そうすれば、きみ、どんな雲も、きみの両足の下にある土ほど多種多様ではなく、美しくも恐ろしくもないことがわかるだろう。P.162

 

未来は、わたしたちの先にあるのではない。もうここに、芽の形で存在しているのだから。未来は、もうわたしたちといっしょになっている。今わたしたちといっしょにないものは、未来になっても存在しないだろう。わたしたちには芽が見えないが、それは芽が地面の下にあるからだ。わたしたちに未来が見えないのは、未来がわたしたちの中にあるからだ。(中略) ーわたしたちの憂いや不信など、まったく馬鹿げたことだ。いちばんたいせつなことは、生きた人間であること、すなわち、成長しつづける人間であることだ。P.197

 

カレル・チャペック園芸家の一年」(平凡社ライブラリー版)より

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春に種を蒔いたバジルの成長が伸び悩んでいましたが、やっと収穫できるようになりました。

小ぶりの葉っぱですが、次から次へと実りをもたらしてくれています。

 

スピードや効率が求められる時代だからこそ、植物を育てたり、編み物をしたり、本を開いたりして、すぐには完結しないことを暮らしの中に取り入れて、時間の感覚のバランスを取っています。

 

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ほがらか文庫026:「父の詫び状」向田邦子著

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「昔カレー」にちらっと登場する日本橋の洋食屋「たいめいけん」の名物、各50円のコールスローボルシチ向田邦子さんがお世話になったというカレーこそ食べなかったのですが、向田邦子さんゆかりのお店で、先日「父の詫び状」談義に花を咲かせてきました。

 

“家族“をテーマに話しはじめたら止まらない叔母と私のランチタイム。

この本をプレゼントしてくれたのも、向田邦子研究会に入っている叔母です。

 

しばらく疎遠にしていた叔母と、こうしてランチをしながらおしゃべりするにいたったことにしてもひとつのエッセイが書けそうなほど、“家族“にまつわるドラマは一人ひとりの中で今も絶賛上演中。

「父の詫び状」は、向田さんの日々のエピソードと家族の思い交わる短編のエッセイ集。わたしもひとつ書いてみようかしら、と思わせるようなひとつの家庭、ひとりの暮らしに息づく1冊でした。

 

いろんな想いの詰まった家族の一員である叔母からいただいたこの本をわたしは生涯大切にしながら、また明日も家族のドラマを綴ります。

 

ほがらか文庫025:「おそうざい十二カ月」暮しの手帖版

お料理本は読みものとして開きますと、穏やかな気持ちになります。

今日の献立を探すのではなく、季節の食材・調理道具・器などを学びます。

そして気になったレシピはぼんやりと頭の中に置きます。

 

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(こうしてリビングに飾っても素敵な1冊です。)

 

なぜこの本が某大手古本屋さんで100円の値札を付けられて売られているのでしょう。

見つけた私はもう驚きと喜びと救出するような興奮した思いでした。

 

この中にあるレシピは、たとえそれを作らなくても読んでいるだけで得られることがたくさんあります。

初版が1969年のこのモノクロのお料理本。

47年の歳月を経ても輝きを損なわない一品一品。

今ではほとんど見かけなくなった、なまりやクジラを使ったレシピなどは、懐かしさと、時代の移り変わりと、忘れたくない食卓の記憶が蘇ります。

 

実際に何品も作っています。

最近ですと、鰯の甘酢煮。

新鮮な鰯を、お醤油やお酢、お砂糖を水で沸かした煮汁に入れてさっと煮るだけ。

お酢をきかせた大根おろしを添えて、おいしくてやさしい晩ごはんのおかずになりました。

大根と白滝の煮物も本当にシンプルな味付けなのに、本当においしくてびっくりします。

今で言う”揚げ出し豆腐”は、お豆腐のオイル焼きという名前で、暮らしに寄り添ってくれます。

 

こういう心に染みる本を世に送り出してきた、暮しの手帖社

それを築きあげた大橋鎮子さんをモチーフにした、NHK朝の連ドラの”とと姉ちゃん”から目が離せません。

ほがらか文庫024:「下町ロケット」池井戸潤著

この本は読んだことのある方も多いのでは?

直木賞作品でもあり、ドラマにもなりましたね。

そうそう、私はちょっと天邪鬼なところがあるので、こういう話題作は敬遠してしまう傾向にあります。

 

でもやっぱり人気作だけのことはありますね。

とても面白かったです。

久しぶりに、「小説読んだー!」という爽快さは結末の読後感からくるのでしょうか。

面白いなと思ったのは、ストーリーがリアルだからです。

なんか、こういうことって本当に起こっていそう。

それと、宇宙開発に携わることは、私も学生の頃まで夢見ていましたから。

「ああ、こんな風にも宇宙に関われるんだ〜。やっぱり理系に進んでおけばよかったなあ。」

なんて・・・

 

宇宙への想いは多くの人を魅了する力があるのでしょうね。

 

この本は夫の勧めで読みました。

ときどき人から勧められた本を読むようにしています。

自分では選ばない本にこそ、新たな興味や感心の可能性があると思います。

それと読み進める目の動かし方というか、文字の処理の仕方というのが、自分で選んだ本とは脳が違う働きをしているような、そんなフレッシュさがあります。

 

ときにはいつもと違う選び方で、いつもと違う場所で本を開いてみるのもいいものです。

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ほがらか文庫023:「安心のペットボトル温灸」若林理砂著

自宅に置く本はたいそう吟味しています。
収納スペースと予算に限りがあるからです。
実用書の類になると、流行りものが多いですので、なおさら我が家に定着する本は少ないです。

その中で私の心を射止めたのがこの本。
「安心のペットボトル温灸」です。
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出会いは"茂木健一郎"からの"夜間飛行(出版社名)"からの"若林理砂"という検索で辿りつきました。

この本の著者は「三食きちんと食べよう」と、厚労省で推進している食事バランスガイドとか提示したり、「食品添加物を気にしすぎるよりも、常識的な範囲で様々な食品をバランスよくとろう」って、まず言っていることが本当にまとも。
「コレを食べたら痩せる!健康になる!」とかそんなこと言わない。
今こういう基本をちゃんと教えてくれる人は少ない。
下手すると「睡眠時間をきちんと取りましょう」と訴える人よりも、「3時間睡眠でいける!」みたいな胡散臭い本に人気が集まったりする時代ですからね。

このような生活の基本もおさえてあり、その上でこの本では、鍼灸師としての知識と経験から、誰もが手軽にできる一般的な症状に対応する、火を使わないペットボトルお灸の方法を丁寧に教えてくれています。

たとえば、最近わたしが使ったのは、「冷房による冷え」に対応するペットボトル温灸。1日冷房のついた部屋で仕事をしただけで、もうだるくて仕方なかったんです。それで、お湯を沸かして、この本を開いて、自分でツボに当てました。その後、しっかり湯舟にもつかって、だるさは取れました。
他にも「肩こり」「疲労回復」「風邪の引きはじめ」など症状別の施術法が書かれています。

元々私は、サプリとか、何か特定のものを食べるとか、そういう取り入れる系の健康法は好かないのです。そういう意味でも、若林理砂さんの健康や養生に対する考えは、無理なく取り入れられたのだと思います。

ただ、もちろんこれが万能ではないことも頭の片隅に置いておくことが必要です。文字から読み取って自分で解釈する過程で、多少オリジナルになりますし、あたりまですけど、込み入った疾患の対応はできません。つきつめれば、一人ひとり身体の状態は違うので、それを自己判断で対応していくのにも限界はあります。

でも我が家の薬箱としての役割は十分に果たします。赤ちゃんにも施術できるんですよ!

それで、もう一歩深めたい私は来月、この著者の講座に申し込みました。楽しみです。


ほがらか文庫022 :「自分メディア」はこう作る! ちきりん著

morinokoakiのフォロワーさんや、はてなブログユーザーさんなら、ちきりんに興味のある方も多いはず。

 
ちきりんの本はこれまで、「自分のアタマで考えよう」「社会派ちきりんの世界を歩いて考えよう!」をおととしくらいに読んだ記憶があります。
久しぶりにまた、ちきりんを読んでみようかなと思って手にしたのが、今回の本。
 
ちきりんがブログを始めた理由から、ブレイクし現在にいたるまで約10年のブログ運営記です。
 
ちきりんはブログを始める前は、ある本を読んだことがきっかけで、ハタチの時からずっと日記を書いています。日記といっても、今日起こった出来事ではなく、今日考えたことを綴ってきました。
 
そしてブログというサービスが世の中で出回り始めたころ、これまで日記に綴ってきた自分の考えを、世の人にも読んでもらえたらおもしそう、という発想でブログをスタートさせます。
 
また、ブログで有名になろうとか、収入を得たいと思ってはいません。ただ自分の考えをブログで発信することが楽しいから続けています。
そのちきりん個人の最優先すべき考えの柱によって、匿名・お面を貫き、営利目的の話に飛びついたりもしません。
 
つまり、ちきりんは考えること、そして考えたことを発信することを楽しんでいるということが伝わってきます。
 
ですので、この本を読んでちきりんが辿ってきたようにブログを運営したら、ちきりんみたいになれるのかな、なんて思ってはいけないですよ。
 
ちきりんの思考録を読むたびに、「あなたも自分のアタマで考えて、楽しく過ごしてねー。そんじゃーね。」って言われている(煽られている?!)気がしてならないのです。
 
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