ほがらか文庫042:詩人 谷川俊太郎さんに会う
かの有名な詩人の姿を感じたくて、私はその時を待った。
2017年6月某日 立川。
会場に早めに着いたものの、全席自由席の開場待ちの列はできていなく、様子を見ながら、しれっと会場入口に近いロビーのソファに腰かける。
いつ椅子取りゲームの戦いが始まるのか、競争心なく育ったひとりっ子の私はソワソワしながらも、次の動向を見守る。
しかし、そしらぬふりを気取ってスマホをいじっていたら、いつの間にかその世界に入っていた。
次に顔を上げたときには、椅子取りゲームは始まっており、完全にひとり椅子を取れないで輪の外に立ち尽くす。
それでもなお冷静を装いながら、会場入口からは遠い最後尾を足早に目指す。
仕方なし…
ところが会場に入ってみると状況は悪くなかった。
登壇者二人を横長の半楕円状に囲むように座席が配置され、真正面はもう埋まっていたもののサイドの最前列はまだ充分残っていた。
ここからが問題だ。
登壇者の二人の向かい合う椅子…
わからない、どちらに谷川さんが座るのか。
椅子取りゲームの瞬発力が今求められている。
今度こそ…
賭けに出た私は、谷川さんが座るだろう椅子から視線がまっすぐ届く最前列を確保した。
しかし、本人が登場するまではまだ勝負はわからない。
なんともスリリング数十分を過ごしたのち、二人が登場。
私はついに勝者となった。
これからここで谷川さんの発する言葉はひとつも取りこぼしたくなかったし、忘れたくない、という欲求を払拭し私はペンをしまった。
記録を残すより、この目と耳と心で、谷川さんを感じることにした。
で、何を感じたかって?
人間でした。
しっかりしたおじいちゃん。
あとは…
秘密です!
ほがらか文庫の図書室でお話ししましょう。
(この時に買った本。中学生の頃「散文」を読んだのが懐かしい。)