ほがらか文庫047:「読んでいない本について堂々と語る方法」ピエール・バイヤール著
ひとりひとりの人生の小さな物語を大切にしたい。
日本人がなぜハワイが好きな人が多いのか。
それは、あのビーチへの憧れだけではない。
多くの日本人がハワイへ行って、幸せなひと時を過ごしたからだ。
世界中で様々な踊りがある中で、日本でフラダンスを踊ろうとするのか。
それは、ハワイでフラダンスを観て楽しんできたからだ。
日本で聞くにはどうしても合わない(と私は思う)ハワイアンミュージックを流す。
それは、ハワイでの自分だけの幸せな物語があって、それを思い出すためだ。
たとえば、毎日使うごはん茶碗にだって、小さな物語がある。
母の日に母たちと陶器市に行って、そこで見つけたお気に入りのお茶碗だとか。
ご近所で陶芸教室を開いている先生が作陶したお茶碗だとか。
1本の焼酎にも物語がある。
閉店時間の酒蔵に飛び込んでから小一時間。
親切ていねいに焼酎の成り立ちを説明してくれた。
それだけではない。
あの町の雰囲気。旅館の趣き。球磨川のたたずまい。
それは、私だけの人生の小さな物語。
ふだんはそのことを多く語ろうとはしないけれど、
誰もが心の本棚にそっと並べているであろう、
ひとりひとりの人生の小さな物語を、
大切にしたい と私は思っている。
そして時にはその中のどれか1冊でも、数ページでも、
誰かと話し合えたらいい。
たとえ目の前に置いてある本を読んでいなかったとしても。