ほがらか文庫033:「モオツァルト・無常という事」小林秀雄著
この本との出会いはこちら(http://s.ameblo.jp/room-hidamari/entry-11990289164.html)に綴りました。
こういう本の選び方もできる時代になりました。
みなさんも、機会を狙って気になる著名人に直接オススメの本を聞いてみるといいですよ。
その答えを惜しむ人はいないはず。
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たった5ページの「無常という事」を題名とする散文のなかには、過去と未来をつなぐ「今」という時の捉えどころのない感覚をわかりやすく表している。
またその中で、川端康成が「生きている人間とは、人間になりつつある一種の動物かな」と言ったことに対して、「多くの歴史家が、一種の動物に止まるのは、頭を記憶で一杯にしているので、心を虚しくして思い出す事が出来ないからではあるまいか。」と思索を深め、「常なるものを見失った」現代を批判している。
この文章はおよそ70年前に書かれているが、今読んでもまったく古びない重要な問いを私たちに投げかけている。
さて、過去と未来の間にある「今」とはいったい何か、ここ数日私の頭を悩ませるテーマである。それも「心を虚しくして」いては答えに辿りつけないのだろう。
他15編、読み応えのある1冊である。