ほがらか文庫041:歌人 東直子さんに会う
新しい月を迎える前に、この月のできごとなりを振り返ってみる。
もう、その残像が歩いてきた道のだいぶ後ろにあって見えるか見えないか、そんな記憶になっている。
でも、色あせずに息づいている印象がいくつもスライドショーのように私の頭の中で上映を繰り返した1ヶ月。
そのスライドショーの一幕は、東直子さんのサインを求めて対面したあの時。
贈り手の名前をたずねられて答えたあとの歌人の言葉。
「朗らかという文字は、なにか意識している感じがしますね。」
かれこれ三十数年つきあってきた、“朗”というこの文字の持つ響きをなかなか捉えられずに生きてきた私にとって、歌人のこの一言は、私の人生を決定づけられたようなインパクトがあった。
さすがプロは違う。言葉へのまなざしが違う。
などど、素人ながらに一歩言葉の深い世界へ足を踏み込んだような、いや私だって詩のひとつも書けるような気にさえなってしまう、ちょっと浮かれたスライドショーの余韻である。
ともあれ、“ほがらか”という人生のテーマを与えられた私にとってこの言葉は、いついつも私に課題を投げかけてくるのである。
(サインしていただいた本)