ほがらか文庫029 : 「園芸家の一年」カレル・チャペック著
本を読んでいると、どこかで必ず心に深く染み込んでくるような言葉に出会います。
そんなとき私は、iPhoneのメモ機能に残しておきます。
また次に読んだときに違和感がありそうなので、付箋をつけたり、マーカーを引いたりすることは今のところしていません。図書館で借りている本の方が多いのが実際のところでもあります。
この取り上げた言葉たちを時々見返すのもまた良いもので、日常のなかでは忘れがちだけれども、大切にしたい想いを再確認するようなひとときとなります。
**********
手のひらほどの大きさでも、庭を持つべきだ。何を踏んでいるか認識するように、少なくとも、花壇を一つ持てるといいのだが。そうすれば、きみ、どんな雲も、きみの両足の下にある土ほど多種多様ではなく、美しくも恐ろしくもないことがわかるだろう。P.162
未来は、わたしたちの先にあるのではない。もうここに、芽の形で存在しているのだから。未来は、もうわたしたちといっしょになっている。今わたしたちといっしょにないものは、未来になっても存在しないだろう。わたしたちには芽が見えないが、それは芽が地面の下にあるからだ。わたしたちに未来が見えないのは、未来がわたしたちの中にあるからだ。(中略) ーわたしたちの憂いや不信など、まったく馬鹿げたことだ。いちばんたいせつなことは、生きた人間であること、すなわち、成長しつづける人間であることだ。P.197
カレル・チャペック「園芸家の一年」(平凡社ライブラリー版)より
**********
春に種を蒔いたバジルの成長が伸び悩んでいましたが、やっと収穫できるようになりました。
小ぶりの葉っぱですが、次から次へと実りをもたらしてくれています。
スピードや効率が求められる時代だからこそ、植物を育てたり、編み物をしたり、本を開いたりして、すぐには完結しないことを暮らしの中に取り入れて、時間の感覚のバランスを取っています。
ほがらか文庫026:「父の詫び状」向田邦子著
「昔カレー」にちらっと登場する日本橋の洋食屋「たいめいけん」の名物、各50円のコールスローとボルシチ。向田邦子さんがお世話になったというカレーこそ食べなかったのですが、向田邦子さんゆかりのお店で、先日「父の詫び状」談義に花を咲かせてきました。
“家族“をテーマに話しはじめたら止まらない叔母と私のランチタイム。
この本をプレゼントしてくれたのも、向田邦子研究会に入っている叔母です。
しばらく疎遠にしていた叔母と、こうしてランチをしながらおしゃべりするにいたったことにしてもひとつのエッセイが書けそうなほど、“家族“にまつわるドラマは一人ひとりの中で今も絶賛上演中。
「父の詫び状」は、向田さんの日々のエピソードと家族の思い交わる短編のエッセイ集。わたしもひとつ書いてみようかしら、と思わせるようなひとつの家庭、ひとりの暮らしに息づく1冊でした。
いろんな想いの詰まった家族の一員である叔母からいただいたこの本をわたしは生涯大切にしながら、また明日も家族のドラマを綴ります。
ほがらか文庫025:「おそうざい十二カ月」暮しの手帖版
お料理本は読みものとして開きますと、穏やかな気持ちになります。
今日の献立を探すのではなく、季節の食材・調理道具・器などを学びます。
そして気になったレシピはぼんやりと頭の中に置きます。
(こうしてリビングに飾っても素敵な1冊です。)
なぜこの本が某大手古本屋さんで100円の値札を付けられて売られているのでしょう。
見つけた私はもう驚きと喜びと救出するような興奮した思いでした。
この中にあるレシピは、たとえそれを作らなくても読んでいるだけで得られることがたくさんあります。
初版が1969年のこのモノクロのお料理本。
47年の歳月を経ても輝きを損なわない一品一品。
今ではほとんど見かけなくなった、なまりやクジラを使ったレシピなどは、懐かしさと、時代の移り変わりと、忘れたくない食卓の記憶が蘇ります。
実際に何品も作っています。
最近ですと、鰯の甘酢煮。
新鮮な鰯を、お醤油やお酢、お砂糖を水で沸かした煮汁に入れてさっと煮るだけ。
お酢をきかせた大根おろしを添えて、おいしくてやさしい晩ごはんのおかずになりました。
大根と白滝の煮物も本当にシンプルな味付けなのに、本当においしくてびっくりします。
今で言う”揚げ出し豆腐”は、お豆腐のオイル焼きという名前で、暮らしに寄り添ってくれます。
こういう心に染みる本を世に送り出してきた、暮しの手帖社。
ほがらか文庫024:「下町ロケット」池井戸潤著
この本は読んだことのある方も多いのでは?
直木賞作品でもあり、ドラマにもなりましたね。
そうそう、私はちょっと天邪鬼なところがあるので、こういう話題作は敬遠してしまう傾向にあります。
でもやっぱり人気作だけのことはありますね。
とても面白かったです。
久しぶりに、「小説読んだー!」という爽快さは結末の読後感からくるのでしょうか。
面白いなと思ったのは、ストーリーがリアルだからです。
なんか、こういうことって本当に起こっていそう。
それと、宇宙開発に携わることは、私も学生の頃まで夢見ていましたから。
「ああ、こんな風にも宇宙に関われるんだ〜。やっぱり理系に進んでおけばよかったなあ。」
なんて・・・
宇宙への想いは多くの人を魅了する力があるのでしょうね。
この本は夫の勧めで読みました。
ときどき人から勧められた本を読むようにしています。
自分では選ばない本にこそ、新たな興味や感心の可能性があると思います。
それと読み進める目の動かし方というか、文字の処理の仕方というのが、自分で選んだ本とは脳が違う働きをしているような、そんなフレッシュさがあります。
ときにはいつもと違う選び方で、いつもと違う場所で本を開いてみるのもいいものです。
ほがらか文庫023:「安心のペットボトル温灸」若林理砂著
ほがらか文庫022 :「自分メディア」はこう作る! ちきりん著
morinokoakiのフォロワーさんや、はてなブログユーザーさんなら、ちきりんに興味のある方も多いはず。
ほがらか文庫021:「民藝の教科書」久野恵一監修
前回、民藝の話をしたので、またまた私の宝物を紹介しましょう。
形から民藝に入りたい方は、この「民藝の教科書」①〜⑥をお薦めします。
残念ながら、私はまだシリーズ6冊のうちの1冊しか持ち合わせていません。
散々悩んだ末に、初めの1冊として選んだのが、「民藝の教科書⑥ 暮らしの道具カタログ」です。
本を開いてまずびっくりしたのは、監修者の久野恵一氏と対談しているのが、大好きな松浦弥太郎さん!なんという巡りあわせ!私の心の世界がどんどん繋がっていきます。
本書の内容は、タイトル通りの民藝品カタログです。
そのカテゴライズが素敵。
【雪国の手仕事】
【山あいの手仕事】
【平野の手仕事】
【海辺の手仕事】
【都から来た手仕事】
【新しい伝統の手仕事】
なぜ道具がそこで生まれ育ち長い間使われているのかがちゃんと分かるようになっています。
それから、「民藝との暮らし方」というテーマで、実際に民藝品を取り入れた住まいを何例も紹介してあるのは、理想を思い描くのにとても参考になります。
私はリラックスしたい時にこの本を開くんです。
心が穏やかになりますし、夢も膨らみます。
まだ持っていない①〜⑤は機会を狙って大人買いしたいものです。
思想から入りたい方には、柳宗悦の著作をお薦めします。
地理学のアプローチとして読むのも面白いです。
国内旅行に出かける前には、ぜひその訪れる地域の民藝品をおさえてから出発すると、より充実した旅になります。お試しあれ。